「together」第4話 崩壊した時空に

これがどういうことを意味するのか。
思考が停止してうごけなくなっているさなか、ルナだけは妙に冷静だった。
私の周りで同じように逃げられなくなっている人に状況を説明する。
「皆、よく聞いて。時元の塔が崩れました。
つまり、私たちの居るこの次元の空間が、危機に陥っているということです。
いつどこに、空間のゆがみが出るかは予測はできません。
しかし、塔の近くの方が危ないです。
一刻も早く・・・。」
ルナが不意に言葉を途切れさせ、目の前の空間を凝視する。
と、不意にそれは出現した。
いきなり黒い丸いものが現われたかと思うと、シュウウと音を立てて。
浸食する。
一体何を浸食しているのか。
判らない。
ただ、恐ろしい危機感を覚える代物。
ルナが叫ぶ、悲鳴を上げるように。
「逃げろ!」

それはその周囲5mにある何もかもを吸い込んだ。ポケモンも、木も、煉瓦も、果ては地面さえ。
残ったものは有って無かった。
そこの空間は見えているような、見えないような。
虚無というべきもの。


やはり私は死ぬべきなのかも知れない・・・。
ふらふらと歩きながら、何をしたいのかもわからずに。
セレーネは考える。
自分がどうすべきなのか。
いくら考えても判らなかった。
と、不意に目の前に気配を感じ、顔を上げると。
戦慄が走った。
幹部のミカルゲ、グレースだ。
逃げなければ、なぜこんなに落ち込んでいるのか、訊かれる前に。
が、グレースは私の隣で何事かを囁いてからこう言った。
「真実ほど、辛いものは、この世には存在しない・・・。
未来ほど儚くて、脆いものはない・・・。
今の気持ち、忘れることの無いように。
あなたはまだ知らないことがある。
そして、まだ知るべきではないから。」
不意に私の意識が遠のく。
安らぐように。

<AfterWord>
やっぱり、ダイアリーの方が読みやすくて良いと感じた今日。
この話は、シリアス一直線(笑)。
まあ、最初から構想がそうだったんだからしょうがない。
というわけで、これからも宜しくお願いします。